東洋医学で読み解く「睡眠と認知症」──脳を整える夜の習慣


皆さんは睡眠は十分取れていますでしょうか。日本は睡眠負債世界1と言われているくらい子供も大人も睡眠不足に悩んでいます。今日は「睡眠とアルツハイマー病の関係」について、最近とても興味深い研究が発表されました。

アルツハイマー病は、いまだ根本的な治療法がなく、これからも患者数は増加していくと予測されています。だからこそ、今できる予防の一歩がとても大切になってきているんですね。

以前から「睡眠不足は認知症のリスクを高める」と言われてきましたが、今回の研究では、ただ睡眠時間が短いかどうかだけでなく、「どの睡眠段階が脳にどう影響しているのか?」という点にまで踏み込まれました。

私たちの眠りは、浅い眠り、深い眠り、さらに「徐波睡眠」や「レム睡眠」といった段階を夜間に繰り返し行き来します。このうち特に“深い眠り”と“レム睡眠”が脳の健康を守るカギであることが、13〜17年という長期にわたる研究から分かったのです。

深い睡眠中、脳では老廃物を掃除する「グリンパティックシステム」が活性化し、アルツハイマー病の原因とされる異常タンパク質の蓄積を防ぐ役割を果たします。深い眠りが不足すると、この大事な働きが滞り、脳の萎縮や記憶力の低下につながる可能性があるのです。

そして、レム睡眠もまた重要な時間帯です。この時間に感情や記憶の整理が行われるとも言われており、極端に短くても長すぎても脳のバランスが乱れ、うつ症状や認知機能の低下と関連する可能性があります。

ここに、東洋医学の視点も加えて考えてみましょう。東洋医学では「睡眠」は“心(しん)”と深く関係するとされています。“心”は精神活動の中心であり、睡眠の質や夢の内容にも影響します。また、夜の睡眠は“肝(かん)”と“腎(じん)”の働きによって支えられ、血(けつ)や精(せい)の巡りが整っていることで、深い休息が得られると考えられています。

たとえば、ストレスが続いたり、血の巡りが滞ると“心”に影響が出て、眠りが浅くなったり、途中で目が覚めたりしやすくなります。こうした体のサインにアプローチするのが、鍼灸治療の得意分野です。

鍼灸では、身体全体のバランスを整え、特に“肝・心・腎”の気血の巡りを改善することで、深い睡眠を促す効果が期待できます。実際に「なかなか寝つけない」「夜中に目が覚める」「眠っても疲れが取れない」といった不調を訴える方に対し、ツボ刺激や自律神経の調整によって睡眠の質が向上したというケースは少なくありません。

また、足元の冷えを取る、胃腸の働きを整える、頭の熱を鎮めるなど、個々の体質に合わせた施術を行うことで、“自然に眠れる体”をつくっていくのが東洋医学のアプローチです。

もちろん、日常のセルフケアも大切です。毎日同じ時間に寝起きする、寝る前にスマホやパソコンを控える、部屋を暗く静かに保つといった基本に加えて、朝日を浴びて体内時計をリセットする湯船に浸かって副交感神経を優位にすることも効果的ですよ。

そして、最近ではウェアラブルデバイスで自分の“深い眠り”や“レム睡眠”の時間をチェックする人も増えています。数値として見えることで、今の自分の状態を把握しやすくなりますし、必要なケアにも気づきやすくなります。

「最近、眠りが浅い」「夢ばかり見て疲れる」「朝の目覚めがスッキリしない」――それは体からの大切なサインかもしれません。

質の良い眠りは、ただの休息ではなく、“脳と心のメンテナンス時間”です。西洋医学の知見と、東洋医学の知恵、そしてあなた自身の生活習慣。これらをうまく組み合わせながら、未来の健康を一緒に育てていきませんか?

投稿者プロフィール

若林 大
若林 大はり灸骨盤矯正colors院長
心と身体の調和がとれた状態を保つには大変な時代。 だからこそ、私たちはあなたとあなたの大切な人たちの健康と幸せのために、施術を通じサ ポートしています。 いつでも私たちに大切なお身体をお任せください。あなたの健康を、心を込めて、全力でサポートします。