自律神経の不調

喉の違和感とストレス——飲み込んだ言葉が、喉に残っていませんか

窓辺の椅子に座り、喉元にそっと手を当てて外を見ている人の後ろ姿

喉の真ん中に、何かがつかえているような感じがする。食べ物は普通に飲み込める。痛みもない。それなのに、違和感だけがずっと消えない。


耳鼻咽喉科で診てもらったら、「異常はありません。ストレスかもしれませんね」と言われた。安心した一方で、どこか置いていかれたような気持ちにもなった。ストレスと言われても、何をどうすればいいのか分からない…。


でも「ストレス」という言葉は、少し大きすぎるのかもしれません。もう少し近くで見てみると、喉が抱えているものの輪郭が見えてくることがあります。


体は、心の動きにとても正直です


人前で話す直前に、喉がきゅっと締まって声が出にくくなる。悲しいことがあったとき、喉の奥が詰まったように苦しくなる。どなたにも覚えがあると思います。


喉のまわりには、飲み込むときや声を出すときに動く小さな筋肉がたくさん集まっています。緊張すると、体は自律神経のはたらきで「動くモード」に入り、この筋肉も身構えるように縮みます。緊張が過ぎれば、ふつうは元に戻ります。


ところが、緊張がずっと続いていると、この「きゅっ」が下がりきらないまま残ることがあります。喉の違和感の多くは、この状態が続いているサインだと僕は考えています。首が前に出た姿勢が続くと、喉の前側が縮んだまま固まりやすいことも、関わっています。


「言えなかった言葉」が喉に残る、という見方


ここからは、少し違う角度の話をさせてください。


東洋医学では昔から、感情と体を切り離さずに見てきました。怒りは肝、思い悩みは脾、悲しみや憂いは肺というように、感情ごとに影響を受けやすい場所があると考えます。そして喉は、その肺の気が出入りする門。声となって、自分の思いを外へ出していく場所です。


言いたいことがあったのに、飲み込んだ。本当は嫌だったのに、笑って引き受けた。家族のために、職場のために、自分の気持ちを後回しにしてきた。そうして飲み込んだ言葉が、喉のあたりに残っているのかもしれない、という見方です。


施術のときにこの話をすると、「そういえば…」と、ぽつりと話し始める方がいらっしゃいます。体の違和感をきっかけに、自分の中にしまっていたものに気づく。僕はそれも、大切な手がかりだと思っています。


抜けない疲れにも、同じ見方があります


同じ考え方で、慢性的な疲れを見ることもあります。


休んでも、寝ても、疲れが抜けない。朝から体が重い。東洋医学では、こうした疲れを「気」が足りなくなった状態として見ます。気を生み出すのは、食べたものを力に変える「脾」。そして脾は、思い悩みの影響を受けやすいとされています。本当は気が進まないまま引き受けていること。休みたいのに、休むことを自分に許していないこと。


考えごとが頭から離れない毎日。そうした日々が、気を生む力より、使う量を上回らせているのかもしれません。


もちろん、疲れにも体の側の理由があります。眠りの深さ、自律神経の切り替え、首や肩の緊張、食事。体の仕組みと心の見方は、どちらかが正しいのではなく、同じことを別の窓から見ているのだと思います。


これは、あなたを責める話ではありません


一つだけ、はっきりお伝えしておきたいことがあります。


喉の違和感は「我慢したあなたが悪い」というサインではありません。言葉を飲み込んだのは、その場を守るため、誰かを守るためだったはずです。それは弱さではありません。ここまで踏ん張ってきた証拠です。


体は、言葉にできなかった分を、代わりに教えてくれているのかもしれません。症状は煙で、原因は火の元です。その火の元が、体の緊張だけでなく、心の中にしまってきたものにもある。そう考えると、喉の違和感は、少しだけ意味の違うものに見えてきませんか。


自分でできることとして、最近飲み込んだ言葉を、紙に書き出してみるのもひとつです。誰にも見せなくて構いません。声に出さなくても、外に出すだけで、喉が少し軽く感じる方もいます。


当院での見かた


当院では、喉そのものを押したり触ったりはしません。首の後ろの張り、顎の下、鎖骨の上のくぼみ、胸の前の縮み具合を確かめ、髪の毛ほどの細さの鍼とお灸で、動くモードから降りられなくなった体をゆるめていきます。


そして、体に触れながら、お話も伺います。無理に話していただく必要はありません。体がゆるむと、言葉が自然に出てくることがあります。それを受け止める時間も、施術の一部だと考えています。


変化は、ふとしたときに出ます。気づいたら、喉を確かめる回数が減っている。人と話していて、喉のことを一度も思い出さなかった。なお、効果や感じ方には個人差があります。


なお、飲み込むときに痛みがある、固形物がつかえて通らない、声のかすれが続く、首にしこりが触れる、思いがけず体重が減っているといった場合は、まず耳鼻咽喉科や内科を受診してください。疲れについても、体重が急に減る、微熱が続く、息切れや動悸があるといった場合は、まず内科を受診してください。


喉に残っているのは、飲み込んだ言葉かもしれません。その言葉を、そろそろ体の外に出してあげませんか。


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