胃腸の不調

便秘とストレスの関係——気を遣いすぎる人の腸で起きていること

朝の光の入るキッチンで、お腹に両手をそっと当てて立っている人の手元

仕事が立て込んだ週になると、決まって出なくなる。旅行に行くと、何日も出ない。人に気を遣う場面が続いたあと、お腹が張って苦しい。


食物繊維を意識している。ヨーグルトも食べている。水もこまめに飲んでいる。それでも出ない。「もともと便秘体質だから」と、あきらめている方も多いと思います。


でも便秘は、食べ物だけの問題ではないことがあります。腸は、心の緊張をいちばん素直に受け取る場所のひとつだからです。


腸は「休むモード」のときに動きます


自律神経には、体を「動くモード」にするはたらきと、「休むモード」にするはたらきがあります。腸がしっかり動いて、中身を先へ送り出すのは、休むモードのときです。


緊張や気がかりが続いて、体がずっと動くモードのままだと、腸の動きは後回しにされます。会議の前に、食欲がなくなる。旅先で、なかなか出ない。あれは体が「今はそれどころではない」と判断しているのです。


しかも、脳と腸は神経でつながっていて、お互いに影響し合っていることが分かっています。心が張りつめると、腸も縮こまる。ストレスが続くときの便秘では、コロコロとした硬い便になったり、便秘と下痢をくり返したりする方もいらっしゃいます。


東洋医学では、肺と大腸は一対です


東洋医学には、この関係をもう一歩深く見る考え方があります。


東洋医学でいう「肺」は、呼吸だけでなく、体の中の「気」を巡らせる役目を担うと考えられています。喉は、その肺の気が出入りする門。そして肺と大腸は、表と裏で対になる関係とされています。


気を遣いすぎる。言いたいことを飲み込む。そうした毎日が続くと、肺の気が少しずつ消耗していきます。肺の気が弱ると、対になっている大腸の「送り出す力」も落ちる。便秘や、お腹の張り、消化の悪さとして表に出てくる。そう考えるのです。


日本語で「気を遣う」と言いますが、東洋医学の目で見ると、本当に「気」を使っているのかもしれません。


ため込んだものは、出ていきにくい


東洋医学では昔から、感情と体を切り離さずに見てきました。悲しみや憂いは肺に、思い悩みは食べたものを力に変える脾に、影響しやすいと考えます。そして大腸は、いらなくなったものを外へ送り出す場所です。


言えなかった言葉を、胸にためている。本当はもう背負わなくていい役割を、手放せずにいる。心がため込んでいるとき、お腹もため込んでいるのかもしれない、という見方です。施術のときにこの話をすると、思い当たることがある、とおっしゃる方がいらっしゃいます。


喉のつかえも、同じ線の上にあります。飲み込んだ言葉については、喉の違和感とストレスの記事で書いています。


あなたが我慢強いから、腸も我慢しているのかもしれません


これは、あなたを責める話ではありません。気を遣えるのは、周りの人を大切にしてきたからです。言葉を飲み込んだのは、その場を守るためだったはずです。


ただ、その優しさの分だけ、腸も一緒に我慢しているのかもしれません。自分でできることを、いくつか挙げておきます。

  • 朝、トイレに座る時間を少しだけ確保する。出なくても構いません。「急がなくていい」時間をつくることが大切です
  • 息を長く吐く。吐く息は、肺の気を巡らせ、体を休むモードに切り替えます
  • お腹を温める。おへその両横、指3本分外側にある「天枢(てんすう)」のあたりに手のひらを当て、ゆっくり円を描くようにさすります
  • 言えなかったことを、紙に書き出す。誰にも見せなくて構いません


当院での見かた


当院では、お腹の張りや硬さ、脈、背中の張り方を確かめます。東洋医学では、背中にも肺や大腸の状態が表れやすい場所があると考えます。あわせて、首や肩、胸の前の縮み具合も見ていきます。気を遣う方ほど、肩が上がり、胸が縮こまって、呼吸が浅くなっていることが多いからです。


そのうえで、髪の毛ほどの細さの鍼とお灸で、動くモードから降りられなくなった体をゆるめ、肺と大腸の巡りを整えていきます。施術の間に、お話を伺うこともあります。無理に話していただく必要はありません。


変化は、朝に出ます。起きてしばらくすると、自然にトイレに行きたくなる。お腹の張りを気にせずに一日を過ごせる日が、少しずつ増えていく。なお、効果や感じ方には個人差があります。


なお、便に血が混じる、黒っぽい便が出る、急に便秘になった、便が細くなった、体重が減っている、強い腹痛や吐き気を伴うといった場合は、様子を見ずに、まず消化器内科を受診してください。いま飲んでいる便秘薬がある方は、自己判断でやめずに、医師や薬剤師に相談してください。


出ていかないのは、お腹の中身だけではないのかもしれません。今日は、少しだけ自分のために、手放す時間をつくってみませんか。


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