胃腸の不調

ストレスからの胃痛——考えごとを、胃が消化しきれていないとき

テーブルの前に座り、みぞおちのあたりに手を当てている人の手元と、湯気の立つ白湯のカップ

大事な会議の前になると、胃がキリキリする。気の重い連絡を待っているあいだ、みぞおちのあたりがずっと重い。食べたものが、いつまでも胃に残っている気がする。


胃薬を飲めば、少しは落ち着く。病院で検査をしても、大きな異常はないと言われた。「ストレスでしょう」と言われて、それはそうなんだけど…と思いながら帰ってきた。


でも「胃が痛い話」という言葉があるように、胃は昔から、心の重さを引き受ける場所として知られてきました。胃が消化しているのは、食べ物だけではないのかもしれません。


胃は「休むモード」でよく働きます


胃が食べたものをこなし、先へ送り出すのは、自律神経が「休むモード」のときです。緊張が続いて「動くモード」に入ったままだと、胃の動きは鈍くなります。


その結果、食べたものがいつまでも残る、もたれる、張る。あるいは、胃の粘膜を守るはたらきと、消化のための胃酸のバランスが崩れて、キリキリと痛む。ストレスからの胃痛は、どんな感じかと聞かれたら、この「キリキリ」と「ずっしり」のどちらか、あるいは両方という方が多いようです。


脳と胃腸は神経でつながっていて、お互いに影響し合っていることが分かっています。心が張りつめると、胃も張りつめる。体はとても正直です。


東洋医学では、思い悩みは「脾」にこたえます


東洋医学では昔から、感情と体を切り離さずに見てきました。その中で、胃とひと続きの「脾」は、食べたものを力に変える場所であり、思い悩みの影響を受けやすいとされています。


同じことを何度も考えてしまう。答えの出ないことを、ぐるぐると考え続ける。そうした状態を、東洋医学では「気滞」と表現します。気が結ばれると、脾と胃の巡りも滞り、食欲が落ちる、もたれる、張るといった形で表に出てくる、と考えるのです。


もうひとつ、我慢やイライラを引き受ける「肝」の気が滞ると、その勢いが胃に向かって、キリキリとした痛みになることがある、という見方もあります。言いたいことを飲み込んで、ぐっとこらえた日の胃の痛み。思い当たる方もいるのではないでしょうか。



「腑に落ちない」ことを、胃が抱えている


日本語には「腑に落ちない」「消化しきれない」「飲み込めない話」という言い方があります。どれも、納得できないことや、受け止めきれないことを、お腹の言葉で表しています。


納得できないまま引き受けたこと。まだ気持ちの整理がついていない出来事。そうしたものを、胃がいっしょに抱えているのかもしれない、という見方です。便秘との関係については、便秘とストレスの関係でも書いています。


これは、あなたを責める話ではありません


考えごとが止まらないのは、それだけ真剣に向き合っているからです。我慢してきたのは、その場を守るためだったはずです。胃が痛むのは、あなたが弱いからではありません。


自分でできることを、いくつか挙げておきます。


  • 食べるときは、食べることだけに集中する。スマートフォンや考えごとをいったん置いて、ゆっくり噛みます
  • みぞおちとおへその真ん中にある「中脘(ちゅうかん)」のあたりに手のひらを当て、ゆっくり温めます
  • 膝のお皿の下の外側のくぼみから、指4本分下にある「足三里(あしさんり)」を、息を吐きながらじんわり押します
  • 頭の中でぐるぐるしていることを、紙に書き出す。胃の中から、外へ出してあげるつもりで


当院での見かた


当院では、みぞおちからお腹全体の張りや硬さ、脈、背中の張り方を確かめます。東洋医学では、背中にも脾や胃の状態が表れやすい場所があると考えます。あわせて、首や肩、胸の前の縮み具合も見ていきます。考えごとの多い方ほど、首がこわばり、呼吸が浅くなっていることが多いからです。


そのうえで、髪の毛ほどの細さの鍼とお灸で、動くモードから降りられなくなった体をゆるめ、脾と胃の巡りを整えていきます。施術の間に、お話を伺うこともあります。


変化は、食事のときに出ます。お腹がすく感覚が戻ってくる。食べたあとの重さが、いつもより早く抜けていく。なお、効果や感じ方には個人差があります。


黒っぽい便が出る、血を吐いた、食べ物がつかえて通らない、体重が減っている、痛みがだんだん強くなる、夜中に痛みで目が覚めるといった場合は、様子を見ずに、まず消化器内科を受診してください。胃薬を飲み続けている方も、一度医師に相談してください。


胃が痛むのは、まだ消化しきれていない何かがあるからかもしれません。今日は、ひとつだけ、胃の外へ出してあげませんか。


自律神経の不調でお悩みの方へ/検査で「異常なし」と言われた方へ