腰痛とストレス——不安や恐れが、腰に乗っていませんか
先のことを考えはじめると、腰のあたりがずしんと重くなる。大きな決断を迫られている時期に限って、朝、腰が固まって起き上がれない。
病院では「骨には異常ありません」「ストレスもあるかもしれませんね」。そう言われても、ストレスで腰が痛くなるなんて、どこか腑に落ちない。本当に痛いのに、気のせいだと言われているような気がする…。
でもストレスで出る腰痛は、気のせいではありません。痛みは本物で、ただ、その強さを決めているものが腰の外にもあるのです。
痛みの強さは、腰だけで決まっていない
痛みは、腰で起きたことがそのまま伝わっているわけではありません。腰からの信号を受け取った脳が、「どのくらい痛いか」の音量を調整しています。
不安や心配ごとが続くと、この音量のつまみが上がりやすくなると言われています。同じ腰の状態でも、気持ちが張りつめている時期はより強く痛み、安心できる時期には同じ痛みが小さく感じられる。
慢性の腰痛では、こうした心の状態も痛みの背景のひとつとして知られています。
そして、不安なとき、人の体は身構えます。背中から腰にかけての筋肉に力が入り、呼吸が浅くなる。その姿勢が続けば、腰は休む暇がありません。
症状は煙で、原因は火の元です。腰という煙の下に、先の見えない不安という火の元がある。そういう腰痛もあります。
東洋医学では、不安や恐れは「腎」に乗ります
東洋医学には、七情という見方があります。怒りは肝に、喜びは心に、思い悩みは脾に、悲しみは肺に。そして、恐れや不安は「腎」に乗る、と考えます。
腎は、生きていく力の土台をたくわえる場所とされています。そして昔から「腰は腎の府(いえ)」と言われ、腰は腎とつながりの深い場所だと考えられてきました。恐れや不安が続くと腎が弱り、腎の住まいである腰に、重さや冷えとなって出てくる。そういう見方です。
日本語にも、腰と気持ちを結んだ言葉がたくさんあります。怖くて「腰が引ける」。驚いて「腰が抜ける」。覚悟を決めて「腰を据える」「本腰を入れる」。不安と腰がつながっていることを、昔の人は体で知っていたのかもしれません。
腎はまた、冷えに弱いとされます。不安な時期に腰が冷えやすい、腰を温めると気持ちまでほっとする。そう感じたことがある方は、少なくないのではないでしょうか。
これは、あなたを責める話ではありません
「不安を抱えているから腰が痛いんだ」と聞くと、自分の心の弱さのせいだと受け取ってしまう方がいます。でも、それは違います。
先のことを心配できるのは、自分や家族の暮らしを守ろうとしている人です。怖いと感じるのは、それだけ大切なものを背負っている人です。腰の痛みは、あなたの弱さではなく、あなたが踏ん張ってきた時間のしるしかもしれません。
だから、不安をなくしましょう、という話ではありません。踏ん張り続けた腰を、少し休ませてあげましょう、という話です。
腰を温め、足の内くるぶしに触れてみてください
腎は冷えに弱いので、まずは腰を冷やさないことから。お腹と腰をぐるりと包むように温めるだけでも、体が身構えた状態から少し降りやすくなります。
そして、内くるぶしとアキレス腱のあいだのくぼみに、太渓(たいけい)というツボがあります。腎の経絡の大切な場所です。不安で落ち着かない夜、このくぼみに親指を当てて、息を吐きながらゆっくり数回押してみてください。強く押す必要はありません。足もとに意識が下りると、上がりきっていた気持ちも、少し腰を下ろしやすくなります。
当院での見かた
当院では、まず動いていただき、前にかがむ、反る、ひねるといった動きのどこで痛みが出るかを確かめます。カイロプラクティックの視点で、骨盤の傾きや股関節の動き、体重がどこに乗っているかも見ていきます。
そのうえで、髪の毛ほどの細さの鍼とお灸を使います。腰の深い層の緊張にはたらきかけることもあれば、足の太渓など腰から離れたツボで、腎を補うように整えることもあります。冷えている方には、お灸で温めることを大切にしています。
そして、今どんなことを抱えているのか、話せる範囲で伺います。腰を見るのと同じくらい、腰に何が乗っているのかを知ることが、火の元を探す手がかりになるからです。
変化は、気持ちの切り替わりとともに出ることがあります。朝の腰のこわばりが短くなる。先のことを考えても、腰が前ほど重くならない。「よし」と腰を上げられる日が増えていく。なお、効果や感じ方には個人差があります。
なお、安静にしていても強く痛む、だんだん痛みが強くなる、足のしびれや力の入りにくさがある、尿が出にくい・漏れる、発熱や体重減少を伴う、転倒やけがのあとから痛むといった場合は、様子を見ずに整形外科などの医療機関を受診してください。腰痛の原因を判断するのは医師です。また、気分の落ち込みや眠れない日が続くときは、心療内科などへの相談も大切な選択肢です。
ずっと踏ん張ってきた腰を、そろそろ休ませてあげませんか。腰を据えて立ち直るための場所として、当院を使っていただけたらうれしいです。
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