自律神経の不調

動悸とストレス——胸のざわつきを、落ち着かせるために

夜の寝室で、ベッドに腰かけて胸の真ん中にそっと手を当てている人の後ろ姿

夜、布団に入ると、自分の心臓の音がやけに大きく聞こえる。仕事中、特に何もしていないのに、急に胸がドキドキしてくる。


心配になって病院で心電図をとってもらったけれど、「異常はありません」と言われた。ほっとした一方で、じゃあこのドキドキは何なのだろう。気にすればするほど、また胸がざわついてくる…。


でも動悸は、体が「動くモード」から降りられずにいるサインであることが多いのです。胸のざわつきには、ちゃんと理由があります。


心臓は、自律神経でテンポを変えています


心臓の打ち方は、自律神経によって、その時々に合わせて変わっています。体が「動くモード」のときは速く強く、「休むモード」のときはゆっくり穏やかに。走ったあとにドキドキするのは、体が必要な分だけテンポを上げているからです。


ところが、緊張や気がかりが続いて、体がずっと動くモードのままだと、何もしていないときにもテンポが上がりやすくなります。そして「ドキドキしている」と気づくと、不安になって、さらに速くなる。この繰り返しで、動悸そのものが気になって仕方がなくなってしまう方も少なくありません。


東洋医学では、心は「喜び」とつながる場所です


東洋医学では昔から、感情と体を切り離さずに見てきました。その中で「心」は、喜びとつながる場所とされています。また心は、こころのはたらきが宿る場所でもあり、気持ちの落ち着きや眠りとも深く関わると考えられています。


喜びは本来、張りつめた気をゆるめてくれる感情です。ところが、楽しみを後回しにして、笑う時間もないまま頑張り続けていると、心の気がゆるむ機会がなくなってしまいます。


反対に、楽しみな予定の前の晩、わくわくしすぎて眠れなかった経験はないでしょうか。はしゃぎすぎ、興奮しすぎも、心を落ち着かなくさせるとされています。喜びは、足りなくても多すぎても、心を揺らす。心は、そういう繊細な場所なのです。


日本語は、心の動きを「胸」で表してきました


胸が躍る。胸が騒ぐ。胸がいっぱいになる。胸をなでおろす。日本語には、心の動きを胸で表す言葉がたくさんあります。昔から人は、うれしいときも、心配なときも、その揺れを胸で感じてきたのでしょう。


胸がざわつくのは、心が何かを受け止めきれずにいるサインなのかもしれません。


これは、あなたを責める話ではありません


心配してしまうのは、それだけ大切なものがあるからです。喜ぶ余裕がなかったのは、それだけ頑張ってきたからです。胸がざわつくのは、あなたが弱いからではありません。


自分でできることを、いくつか挙げておきます。


  • 吸う息より、吐く息を長くする。ゆっくり長く吐くと、体は休むモードに切り替わりやすくなります
  • 文字どおり「胸をなでおろす」。手のひらを胸の真ん中に当て、上から下へゆっくりなでます
  • 手首の内側のしわから、ひじのほうへ指3本分の、2本の筋の間にある「内関(ないかん)」を、息を吐きながらじんわり押します
  • 一日にひとつ、小さな喜びを自分に許す。好きな飲み物をゆっくり味わう、それだけでも構いません


眠りが浅い、夢をよく見ると感じる方は、眠りが浅い・夢をよく見るときの記事も参考にしてください。


当院での見かた


当院では、首や胸の前の縮み具合、呼吸の深さ、脈、お腹の状態を確かめます。胸がざわつきやすい方は、肩が上がって胸が縮こまり、呼吸が浅く速くなっていることが少なくありません。


そのうえで、髪の毛ほどの細さの鍼とお灸で、動くモードから降りられなくなった体をゆるめ、心の気がのびやかに巡るように整えていきます。施術の間に、お話を伺うこともあります。


変化は、夜に出ます。布団に入っても、心臓の音が気にならない。気づいたら眠っていた。なお、効果や感じ方には個人差があります。


なお、動悸は、心臓や甲状腺などの病気のサインであることもあります。まだ受診していない方は、まず内科や循環器内科で、心電図などの検査を受けてください。


胸の痛みや締めつけられる感じがある、息苦しい、気を失いそうになった、脈がとても速い・飛ぶ・乱れる状態が続く、冷や汗を伴うといった場合は、様子を見ずにすぐ医療機関を受診してください。強い胸の痛みが続くときは、ためらわずに救急車を呼んでください。


胸のざわつきは、心が少し休みたがっている合図かもしれません。今日は、ひとつだけ、小さな喜びを自分に許してあげませんか。


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