東洋医学・ツボ

鼻詰まりとストレス——泣けなかった涙が、鼻にたまっていませんか

窓辺で胸にそっと手を当て、ゆっくり深呼吸している人の後ろ姿

風邪をひいているわけでもない。花粉の季節でもない。それなのに、鼻が通らない。夜、布団に入ると片方ずつ詰まって、口で息をしている。


耳鼻咽喉科で診てもらっても、大きな異常はないと言われた。点鼻薬を使えばその場は通るけれど、また詰まる。気づけば、呼吸がいつも浅い。

でも鼻は、心と体の緊張の影響を、思っている以上に受けやすい場所です。鼻が通らないのには、鼻の外にも理由があることがあります。


鼻の中は、自律神経で開いたり閉じたりしています


鼻の中の粘膜には、細かな血管がたくさん集まっています。この粘膜は、自律神経の調整で、ふくらんだり縮んだりをくり返しています。左右の鼻が交互に少しずつ詰まるのも、この調整によるものです。


ところが、緊張や疲れが続いて、自律神経の切り替えがうまくいかなくなると、この開け閉めのリズムも乱れやすくなります。夜になると詰まる、疲れた日ほど通らない。そういう方は、鼻そのものより、切り替えの側に原因があるのかもしれません。


涙と鼻は、つながっています


泣くと鼻水が出るのは、涙の通り道が鼻の奥へつながっているからです。泣きたいのをこらえたとき、鼻の奥がツンとするのも、同じ場所です。


悲しいことがあったのに、泣く暇がなかった。人前で泣くわけにはいかなかった。そうして、こらえた涙はどこへ行くのでしょうか。

涙も、言いそびれた言葉も、鼻のあたりで行き場をなくしているのかもしれません。


東洋医学では、鼻は「肺の窓」です


東洋医学では昔から、感情と体を切り離さずに見てきました。鼻は「肺」が外とつながる窓と考えられていて、その肺に影響しやすい感情は、悲しみや憂いとされています。


悲しみを飲み込む。気を遣いすぎる。そうした毎日が続くと、肺の気が弱り、その窓である鼻の通りも悪くなる。喉のつかえや、肺と対になる大腸の便秘と同じ線の上にある、と見るのです。喉については喉の違和感とストレス、便秘については便秘とストレスの関係で書いています。


「息をつく暇もない」という言葉があります。自分のことを後回しにして、息をつくための余白さえなくしている毎日。鼻が通らないのは、その余白のなさを体が映しているのかもしれない、という見方もできます。


これは、あなたを責める話ではありません


涙をこらえたのは、強くいなければならない場面があったからです。自分を後回しにしたのは、誰かを大切にしてきたからです。それは責められることではありません。


自分でできることを、いくつか挙げておきます。


  • 小鼻のふくらみのすぐ横にあるくぼみ、「迎香(げいこう)」を、人差し指の腹で左右同時にやさしく押します。肺と対になる大腸の流れの上にあるツボです
  • 首元と胸を冷やさない。朝晩はストールや襟のある服で守ります
  • 息を長く、ゆっくり吐く。鼻が通りにくいときは、口からでも構いません
  • 泣きたいときは、ひとりの時間に泣いてもいい、と自分に許してあげる

当院での見かた


当院では、首や胸の前の縮み具合、背中の張り、脈やお腹の状態を確かめます。東洋医学では、背中にも肺の状態が表れやすい場所があると考えます。鼻が詰まりやすい方は、胸が縮こまって呼吸が浅くなっていることが少なくありません。


そのうえで、髪の毛ほどの細さの鍼とお灸で、首から胸、背中をゆるめ、肺の巡りを整えていきます。顔のツボを使うこともあります。施術の間に、お話を伺うこともあります。


変化は、夜に出ます。布団に入っても、鼻で息ができている。朝、口が乾いていない。なお、効果や感じ方には個人差があります。


なお、片側だけがずっと詰まっている、鼻血をくり返す、顔や目のまわりが腫れて痛む、黄色や緑色の鼻水が続く、急ににおいが分からなくなったといった場合は、まず耳鼻咽喉科を受診してください。点鼻薬を使っている方は、使い方を医師や薬剤師に相談してください。


鼻が通らないのは、息をつく余白がなくなっている合図かもしれません。今日は、少しだけ深く息を吐いてみませんか。