肩こり・首こり

肩の痛みと肩甲骨——揉んでも戻る肩に、動いていない場所があります

白いシャツの女性の後ろ姿。右手を背中に回し、肩甲骨のあたりに触れている

肩が痛い。揉んでもらうと、その場は軽くなる。でも、数日すると戻っている。


筋肉が固いからだと思って、ストレッチもした。お風呂で温めもした。それでも、同じ場所が、同じように痛む。


肩の筋肉が固いなら、ほぐせばいい。とても自然な考え方です。実際に楽になるのですから、間違いでもありません。


でも、揉んでも戻るのなら、固くなっている場所は「原因」ではなく「結果」かもしれません。肩の痛みの出どころが、肩ではなく肩甲骨にあることが、少なくないのです。


腕を上げているのは、肩の関節だけではありません


肩甲骨は、背中の上に浮いている平たい骨です。骨で体幹につながっているのは鎖骨との一点だけで、あとは筋肉に支えられて、背中の上を滑るように動きます。


腕を横から上げていくとき、動いているのは肩の関節だけではありません。肩甲骨が一緒に回って、上を向いていく。腕を上げる動きのかなりの部分を、この肩甲骨の動きが担っていると言われています。


引き戸を思い浮かべてください。レールにゴミが詰まって戸が重いとき、人は取っ手を強く引きます。取っ手ばかりに力がかかって、そこがきしむ。でも、きしんでいるのは取っ手でも、直すべきなのはレールです。取っ手を磨いても、レールが詰まったままなら、また同じところがきしみます。


肩の痛みも、これに似ています。猫背で肩甲骨が外に開いたまま固まっていたり、背中の上のほうが丸まって動かなくなっていたりすると、肩甲骨というレールが動かない。その分を、肩の関節という取っ手が全部引き受ける。だから、揉んで取っ手を楽にしても、また戻るのです。


肩甲骨が動いているか、壁で確かめてみてください


簡単な目安があります。壁に、かかと・お尻・背中・後頭部をつけて立ちます。そのまま、両腕を横からゆっくり上げていきます。


  • 耳の横まで、腕が楽に上がりますか
  • 途中で、背中や腰が壁から離れませんか
  • 肩がすくんで、首が短くなりませんか

腰を反らせないと上がらない、途中で肩がすくむ。そういう方は、肩甲骨や背中の上のほうが動きにくくなっていて、腕を上げるたびに肩が余分に働いているのかもしれません。これは診断ではなく、あくまで目安です。痛みが出る場合は、無理に上げないでください。


凝っている場所は、頑張っている場所です。症状は煙で、原因は火の元です。痛みという煙が上がっているのは肩でも、火の元は肩甲骨と、その周りの動かなくなった背中にある。そういう方が、少なくありません。


当院での見かた


揉むことが悪い、という話ではありません。固くなった筋肉がゆるむのは、体にとって間違いなく楽なことです。ただ、それを何度繰り返しても戻るなら、順番を変えてみる価値があります。


当院では、痛む肩そのものより先に、肩甲骨がどれくらい動くか、背中の丸まり方、首の位置を確かめます。僕が治療家として25年、骨格の側から見てきた視点です。肩が全部引き受けている状態なら、まず肩甲骨と背中のほうを動けるようにしていきます。


そのうえで、髪の毛ほどの細さの鍼で、肩甲骨の内側や裏側といった、揉んでも届きにくい深い層の緊張にはたらきかけます。東洋医学では、肩の痛みを「巡りの滞り」として見ることもあり、肩から離れた手や足のツボを使うこともあります。


変化は、何気ない動作のときに出ます。朝、洗濯物を干すとき。髪を洗うとき。腕を上げても、肩が身構えなくなっている。「あれ、今日は重くない」と気づく朝が、少しずつ増えていく。なお、効果や感じ方には個人差があります。


なお、手や指のしびれ、力の入りにくさがある場合は首の神経が関わっていることがあります。転んだりぶつけたりした後の痛み、腕がまったく上がらない、肩が腫れて熱を持っている、という場合も含め、まず整形外科を受診してください。


また、肩の痛みに胸の痛みや息苦しさ、冷や汗を伴う場合は、肩の問題ではないことがあります。様子を見ずに、すぐ医療機関へ連絡してください。

揉んでも戻るのは、揉み方が足りないからではありません。動いていない場所が、別にあるからかもしれません。その場所を、一緒に探してみませんか。


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この記事を書いた人

若林 大(わかばやし・だい)/鍼灸colors 院長

はり師・きゅう師、カイロプラクティック理学士。治療家として25年、骨格と東洋医学の両面から体を診ています。

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