睡眠・疲労

寝付きが悪いのはなぜ?——布団に入っても、体が休む準備をしていない夜に

薄暗い寝室で、ベッドに横になったまま天井を見上げている女性。枕元に伏せたスマートフォン

布団に入って、目を閉じる。でも、眠れない。三十分たっても、一時間たっても、頭のどこかが起きている。時計を見るたびに「早く寝なきゃ」と焦って、ますます目が冴えてくる。


次の日のことを考えると、余計に眠れなくなる。そんな夜をくり返していませんか…。

でも寝付きが悪いのは、意志が弱いからではありません。多くの場合、体のほうが、まだ休む準備をしていないのです。


眠りは「するもの」ではなく「訪れるもの」


眠りは、頑張って取りに行くものではありません。体が昼のモードから夜のモードへ切り替わると、自然に訪れるものです。

だから「早く寝なきゃ」と力が入るほど、体は昼のモードのまま。眠ろうとする努力そのものが、眠りを遠ざけてしまうことがあります。寝付きが悪いときは、眠る方法より先に、体が夜のモードに切り替われない理由を探すほうが近道です。


理由1:頭が、まだ動いている


布団に入ると、昼間のことや明日のことが次々に浮かぶ。考えごとが止まらない夜は、頭が「動くモード」のままです。

寝る直前までスマートフォンを見ていると、明るい画面と次々に入ってくる情報で、頭はさらに起きた状態になります。体は横になっていても、頭だけが昼の続きをしているのです。


理由2:体の緊張が、抜けていない


僕が施術で寝付きの悪い方の体に触れると、首や肩、背中がこわばったままの方が少なくありません。お腹が固く、呼吸が胸の上のほうで浅く速くなっていることもよくあります。

体が緊張したままだと、横になっても「休んでいい」という合図が体に届きにくくなります。頭を休ませようとしても、体のほうが身構えたまま、という状態です。


寝付きが悪いうえに、眠りも浅い。夜中に何度も目が覚める。そういう方は、昼の緊張が夜まで続いているのかもしれません。眠りの浅さについては、眠りが浅い・夢をよく見るときの記事で詳しく書いています。


理由3:一日のリズムが、夜に追いついていない


夜の眠りは、朝から準備が始まっています。朝に光を浴びると、体の中の時計が「一日が始まった」と動き出し、その流れの先で、夜の眠気がやってきます。

反対に、朝の光が少ない、夕方以降にコーヒーや緑茶をとる、寝る直前にお腹いっぱい食べる。こうしたことが重なると、体の時計が夜に追いつかないまま、布団に入ることになります。


東洋医学では、眠りは「心」が休む時間


東洋医学では、眠りを「心(しん)」が休む時間と考えます。心は、考えたり感じたりする働きが宿る場所です。気がかりや緊張が続くと心が落ち着かず、横になっても休めない、と見ます。

症状は煙で、原因は火の元。「寝付きが悪い」という煙の下に、頭の高ぶりなのか、体の緊張なのか、一日のリズムなのか、火の元を探していきます。


急に寝付きが悪くなったとき


これまで眠れていたのに、急に寝付きが悪くなった。そんなときは、生活の変化やストレスが重なっていないか、振り返ってみてください。季節の変わり目や、仕事・家庭の環境が変わった時期に起こりやすいものです。


多くは、きっかけが落ち着くと戻っていきます。ただ、長く続く場合や、次のような場合は、まず医療機関に相談してください。

  • 眠れない状態が長く続き、日中の仕事や生活に支障が出ている
  • いびきが大きい、寝ている間に呼吸が止まると言われた
  • 気分の落ち込みが続く、何をしても楽しめない
  • 強い痛みやかゆみ、息苦しさで眠れない


睡眠薬などのお薬を飲んでいる方は、量や飲み方を自分で変えず、必ず主治医に相談してください。


今夜からできること


いきなり全部をやる必要はありません。一つだけ、続けやすいものから選んでください。


  • 眠くなってから、布団に入る。眠くないのに横になって焦るより、眠気が来るまで別の部屋で静かに過ごすほうが、寝付きやすくなります
  • 布団の中で、時計を見ない。時間を確かめるたびに、頭が起きてしまいます
  • スマートフォンは、枕元に置かない。手の届かない場所で充電するだけでも、触る回数が減ります
  • 息を、長く吐く。お腹に手を当てて、吸う息より吐く息を長くしてみてください。体に「休んでいい」と伝える合図になります
  • 首元を、冷やさない。首や肩に力が入りやすい方は、寝る前に首元を温めておきます


当院での見かた


当院では、寝付きの悪さを「眠れない」という一点だけで見ず、首や肩、お腹の緊張、呼吸の深さ、脈やお腹から体質を確かめます。そのうえで、体が夜のモードに切り替わりやすい状態を目指して整えていきます。


鍼が苦手な方には、鍼を使わないSBR快眠整体もあります。お腹と頭にやさしく触れる手技で、身体を休息しやすい状態へ整えることを目指す施術です。初回は睡眠分析つきで、今の眠りの状態を一緒に確かめるところから始めます。なお、効果や感じ方には個人差があります。


眠りは、頑張って取るものではなく、体が準備できたときに訪れるもの。今夜は、眠ろうとするのを少しだけやめて、体をゆるめるところから始めてみませんか。


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この記事を書いた人

若林 大(わかばやし・だい)/鍼灸colors 院長

はり師・きゅう師、カイロプラクティック理学士。治療家として25年、骨格と東洋医学の両面から体を診ています。

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