首こりに鍼灸という選択——肩を揉んでも変わらない重さの正体
「肩を揉んでもらっても、首の重さだけは変わらない」
札幌市手稲区で鍼灸院をしています。初めてお越しになった方から、この言葉を本当によく聞きます。肩は確かに軽くなる。その日は楽になる。けれど数日すると戻っていて、しかも首の奥にあるあの重さは、最初からずっと同じ場所に居座っている。
「もう歳だから」「パソコン仕事だから仕方ない」。そう片づけて、とりあえず湿布を貼る。そういう付き合い方を、何年も続けている方は少なくありません。
でも、その「変わらない」という感覚は、たぶん正しいのだと思います。変わらないのは、まだ首に用が届いていないからかもしれません。
首は、肩の延長ではありません
人の頭は、ボウリングの球ほどの重さがあるといわれています。それを支えているのが、あの細い首です。
まっすぐ載っているうちは、細くても支えられます。ところが、ほんの少し前に出るだけで話が変わる。傘をまっすぐ持てば軽いのに、少し前に傾けただけで手首にこたえますよね。首も同じで、前に出た分だけ、後ろ側がずっと引っ張って支え続けることになります。
首のこりは、こっている場所の問題というより、支え続けている状態の問題だと僕は考えています。だから、こっているところを揉んでも、支え方が変わらなければ、また同じ場所が引き受けます。
もうひとつ、首には肩と違うところがあります。頭へ向かう血管も、自律神経——体を動かすモードと休むモードを切り替えるはたらきのことです、この細いところを通っています。首のこりがこりのままで終わらず、頭痛や、めまいや、目の奥の重さといった別の形で出てくることがあるのは、そのためだと考えています。
手で届く深さと、鍼が届く深さは違います
では、なぜ鍼なのか。
首の後ろは、浅いところから深いところまで、小さな筋肉が層になっています。表面をゆるめることと、その下の層に届くことは、別のことです。手のひらで押すと、どうしても浅い層から先に力がかかる。奥に用があるときほど、手前を強く押すことになってしまいます。
鍼は、太さが0.1〜0.2ミリほど。髪の毛ほどの細さです。この細さだと、手前の層をかき分けずに、必要な深さへ直接届きます。強い刺激で押し勝つのではなく、細いから通れるという道具です。
「首に鍼は怖い」とおっしゃる方は多いのですが、実際にお受けになった方の多くは「思っていたのと違った」と言われます。
もちろん、マッサージや整体が良くないという話ではありません。僕自身、カイロプラクティックを25年続けています。表面の緊張がゆるむこと自体は、体にとって間違いなく良いことです。ただ、それで届かなかった場所があるとしたら、道具を変えるという選択肢もある、というだけの話です。
首だけを見て、首を触るわけではありません
とはいえ、首が痛いから首に鍼を打つ、という組み立てを僕はしません。
首が支え続けているということは、どこかで支える力が足りていないということです。骨盤かもしれないし、足元かもしれない。あるいは、眠りや食事のほうに理由があるのかもしれません。凝っている場所は、頑張っている場所です。
ですから当院では、姿勢や骨格の配分を見たうえで、脈やお腹、爪や皮膚の状態も確かめます。森を見て、木を治す。全体を見たうえで、手を入れるのは一本の木、という考え方です。
首から診るのは、首が悪いからではなく、首がいちばん無理をしている場所であることが多いからです。
変わるのは、夜の時間の使い方です
夜、本を読んでいて、首の後ろが気になって途中でやめてしまう。枕の位置を何度も直す。そういう夜を過ごしている方は、少なくありません。
首のことを考えずに一日を終えられる、というだけで、夜の時間の使い方は変わります。
「痛みがない」というより、「痛みのことを考えていない時間」が増えていく。そういう変わり方をします。
なお、感じ方には個人差があります。
なお、手にしびれがある、力が入りにくい、強いめまいを伴うという場合は、まず医療機関を受診してください。
「肩を揉んでもらっても、首の重さは変わらない」。その感覚を、一度ちがう角度から確かめてみませんか。
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